岡山県 倉敷
吉備国 倉敷(1)
昔、吉備という大きな勢力をもつ国があった。朝廷のあった大和や神々の国出雲などと肩を並べていた先進的な国であった。いまの岡山・倉敷・総社市のあるあたりがそうだ。岡山駅を通り倉敷に向う時、田園にたおやかな豊かさを感じるが、吉備国の先進性を支えたのはこの豊かさであった。米や豆、雑穀が豊富に獲れた。さらに、瀬戸内海を船が行きかい、先進的な情報や人、武器そして新種の種が入ってきた。北に山を越えると鉄の国もある。倉敷はそんな風土をもつ国で時を刻んだ町である。
大原美術館
倉敷は飛騨高山、豊後日田などと同様、天領だった。豊かな産品を生み出す土地を天領にするのは徳川幕府一流のやり方で、お代官様が治めた。
古くから、米、塩それに醤油、酒などの醸造品がよくとれ、売れた倉敷。近現代になって、それらの産品のほかに綿と絹を中心にした織物産業が盛んになり、それらの産業従事者の嗜みを満たすための商売もまた、盛んになった。いま、本町通りの商家、町家にその繁盛振りを見ることができる。長者の中では大原一族が最も栄えたらしく、その美術館に収められた絵画、陶芸品は素晴らしい。息をのむほどというのはこういう時間を形容する言葉であろうと思うのである。